合格体験記: いわゆる純粋未修者の合格例
T・O さん
東京大学法科大学院 未修者コース修了
(平成21年10月記)
はじめに
私は理系学部から法科大学院の未修者コースに進み、1回目の挑戦で新司法試験に合格することができました。法律に関連する学歴・職歴等は法科大学院入学前には一切ありませんでしたので、いわゆる純粋未修というグループに属することになると思います。自分がそうであったように純粋未修からの合格者の声は知りたくても知る機会が少ないところ、今回せっかくこのような機会をいただいたので、こういう合格者がいたということを知っていただき、ちょっと安心してもらうことができればいいかな、と思い書いてみます。
ただ一点だけ先にお断りしておきたいのは、以下に記す内容、特に勉強法についての部分はおよそ一般的な司法試験受験生の勉強法とはかけ離れたものとの評価を受けること間違いないものです。方法ではなく、その方法に至るまでの「目標があるときにどう乗り越えるか自分で考える」ということを念頭において読んでいただければ幸いです。
法科大学院での勉強について
私の勉強の基礎となったのはやはり法科大学院における授業です。既修者が既修者たる所以は学部で法学の授業を受けているからであって、未修者も同様にまずは学校の授業にとっかかりを得て法学を身につけるしかないと思います。予習をしっかり行った上で、授業中は積極的に発言するように心がけていました。的外れな発言をしてしまうことも多かったのですが、恥ずかしい思いをした時のことは忘れないものですから、後で深く研究して身につけると力になります。少なくとも2年次一杯までは授業も新司法試験にある科目が中心なのですから、新司法試験対策をするよりも授業に全力を投じるつもりでよいのではないでしょうか。学校の授業で取り扱われることは新司法試験で必要とされる事柄に比して高度過ぎる、専門的過ぎると言われることも多々ありますが、未知の問題に自分で考えて答えを出すということの訓練になり、十分新司法試験の問題に合致すると思います。
また私の場合、人によっては敬遠しがちな実務系科目を積極的に取って、取り組んでいきました。司法試験は通過点に過ぎないという馬鹿正直な思想に基づいてですが、結果としては基本的な問題をちゃんと処理、説明できるかという最も大切な能力が養われ、試験対策としても大いに寄与したと思っています。
授業主体という姿勢を取ると時間の都合で省略される部分がままある法科大学院では、その部分がそのまま抜け落ちてしまいます。そこで、土日や長期休暇にどれだけ授業とは直接関係ない勉強ができるかが穴を作らないための重要なポイントになります。基本書や百選の授業で取り扱われない部分を読んだりして通読状態にする、気になった論点をちょっと深く研究してみたりジュリスト増刊の法律学の争点シリーズを読んでみたりするなどです。予習や課題と違って期限に追われることなく好きな本を読んでゆったりと勉強できる時間なので、これらのことをしている時間の方が好きでした。
新司法試験対策としての勉強について
- 解決すべき課題
3年次後期辺りに差し掛かってくると、新司法試験を意識せざるをえなくなり、今の自分の問題点も見えてくると思います。私の場合、短答式試験についてはTKCの模試で安定して高得点が得られており、特に注力する必要はないだろうという感触でした。ただ、なぜか取りこぼす問題も相当ありましたし、いつの間にか抜かれていたということがないように自分の受験生の中での位置を定期的に確認する必要があるとは感じていました。
一方論文式試験については深刻な問題がありました。喋る分には論じられますし内容も悪くないようなのですが、それをうまく文章にすることができないとか、文章化に時間がかかって途中答案になってしまうということが期末試験を通じて現れてきていたのです。どういう言い回しをするのが適切かが分からない等の様式的な問題と、純粋な事案解決能力の不足の両面を補うために実際に答案を書きつつ誰かに問題点を指摘してもらうことが必要でした。
そこで、Wセミナーの「短答式答案練習会」と「論文式答案練習会」を受講することとしましたが、後述するように、直接の試験対策はこの答案練習会が勉強の軸となりました。 - 短答対策
短答は得意という状態にあったこともあり、短答対策というものは殆どしていない部類に入ると思います。明確に短答対策としてやったのは、肢別本を全科目一回回し、判例六法による関連判例も含めた条文素読を一回して、「短答式答案練習会」を受けて毎回復習をしただけです。短答はどんな方法でもいいから知識が入っていればいいのであって、基本的には論文の勉強をしっかりやっていれば足ると思います。ただ、メインとしている勉強法によって偏りが出てくるのでそれを補正するために答練は非常に有効でした。基本書を中心に勉強していた自分の場合、数回の答練を経てどの科目においても条文自体の知識を問われている問題に弱いと感じたので、条文素読によってこれを補うこととしました。ただ、条文素読は非常に苦痛な作業であり効率的な時間の使い方でもないので、積極的にお勧めはしません。
なお、一点付記するならば、受験生の中での自分の位置を安定的に確認できるという短答式答練の特徴は、回毎に得点がばらつきがちな論文式答練にはない重要な点だと思います。 - 論文対策
予備校本は一切使用せず基本書と百選を中心にした学習でしたが、「論文式答案練習会」を存分に活用して行いました。日程に合わせて該当科目を勉強するというペースメーカー機能に始まり、答案を作成・提出したあとは配付される参考答案及び論点解説をよく読み該当論点の復習を行います。答案が帰ってきたら添削事項を確認した上で自分の答案と参考答案及び受講者の優秀答案を比較して、論点や事実を拾うことができていたか、言い回しや記述の順序、分量のバランスは適当であったか等をチェックしました。「答案とはこういうものなのだ」と、この時点で初めて気がついたことも多かったですし、受講者の優秀答案をみて自分が過剰な記述をしていたことに気がつき簡潔な記述を心がけるなど改善点はたくさんあったと思います。遅筆を補うために色々なペンを試してみることもしました。
そして何より、答練の受講は、時間配分の重要性を痛感する数少ない機会ではないでしょうか。例えば解説講義で羽広政男先生が言っておられたような、行政法から解き、多めの時間を割く等の時間の使い方だけで本番の点数は大きく変わると考えます。特に本年度の試験のように行政法の分量が多く内容が平易である場合、書かなかった分だけ他の受験生と差がついてしまうと思われ、私の友人の一人も実力者でありながら憲法から先に解き、行政法が非常に簡素な内容になってしまったために公法系の点数が伸びず残念な結果に終わったことを後悔していました。これは結果論に過ぎないのかもしれませんが、当日あれこれ考えたり慌てないためにも自分の得意不得意も考慮しつつ、戦略を考えておくことは必要です。
これらをこなすだけでかなりの時間を取られたこと、新司過去問をやった結果基本的な事項の理解が必要かつそれで十分と考えたものの、未だそのレベルのことですらインプットが不足していたことから、旧司過去問や問題集は直前期に至ってもほとんど解いていません。しかしこれらはやりたかったことですし、やる方がベターです。自分の場合にはそういう状況になかったというだけなので、ぜひ皆さんは早めにインプットを終わらせアウトプットのトレーニングを行うようにしてください。
まとめ
基本書を使おうが予備校本を使おうが結局は自分の実力をどこまで伸ばすことができるかの勝負で、純粋未修者は最後の最後に駆け込んで、ようやく合格に届く形になるのは当たり前だと思います。これから新司法試験に挑まれる方は、試験4日目の最後にペンを置くまで、どうか絶対にあきらめないでください。3月のWセミナーの「全国統一模試」で論文成績が下位30%に入り絶望し、本番も結局選択科目と憲法で途中答案をやらかして(最も後者は答案戦略上覚悟していたものではあります)さらに絶望したものでしたが、短答は290点台、論文も予想していたような短答逃げ切り策などまったく不要なほど全科目バランスよく良い点でまとまり、結果的には短答も論文も本番をそれまでで最高の出来とすることができました。
最後になりましたが、皆様の努力が報われ、新司法試験に合格されることを心からお祈りいたします。

