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合格体験記:試験前年10月からの試験対策

関口 慶太さん

関口 慶太さん

大阪大学法科大学院 未修者コース

(平成21年10月記)

 

この体験記の目的

 はじめまして。関口慶太です。私は、大阪大学法科大学院を2009年3月に修了し、幸運にも同年9月に新司法試験に合格することができました。本体験記は、主に「司法試験直前期の皆さん」に、おおよそ中位合格者にあたる私が「試験前年の10月からどのような勉強方法をしていたのか」の資料を提供することを目的とします。拙い経験ですが、皆さんの合格の一助になれば幸いです。

過去問・出題趣旨・ヒアリング・再現答案の分析

 受験勉強とは、目標達成に向けて計画を立て、実行し、反省をすることの繰り返しです。その際、約半年間の長期的な計画、1ヶ月単位の中期的な計画、週単位の短期的な計画を立てることが重要です。

 私は、2008年の10月に長期計画を立てました。受験生の最終目標が論文式を含めた最終合格であることに疑いはありません。しかし、それでは具体的に何をしたらいいのか漠然としていて、実行可能な計画が立てられません。そこで、過去問・出題趣旨・ヒアリングと早稲田経営出版等の「論文式試験 再現答案集」(10月の時点では前年度の分しかありませんが)を読み込み、およその合格者と自分の実力との距離を知ることで、具体的に何をしたらいいかまで落とし込みます。私の場合、直前期までに各判例百選を3回まわすことや、過去問を3度解き直すこと等を長期計画としました。これにより、月単位で何をすれば良いか、週単位で何をすれば良いかが明確となり、「自分が前進していないのではないかという不安」に負けずに勉強に打ち込むことができました。

 この出題趣旨・ヒアリングの分析作業は、とても時間がかかります。一週間分析作業に費やしたこともありました。それゆえ、出題趣旨・ヒアリングを真剣に分析する受験生は意外と少ないのです。しかし、出題趣旨・ヒアリングの分析こそ、実は司法試験合格に最も重要な作業なのです。この作業を怠ると、受験勉強とは関係のない方向に走ってしまうおそれがあるので、まだ分析をしていないという場合は、今すぐにでも分析に取り掛かってください。私は試験期間中も出題趣旨・ヒアリングを読みましたが、それなくして私の合格はなかったと断言します。もし分析の方法がわからないという場合は、「平成20年 新司法試験 論文式試験再現答案集 羽広式分析版」(早稲田経営出版)に詳細な分析が記載されているので参考にしてみてください。私自身も直前期の分析の参考にしました。

 なお、私は、ストップウォッチを用いて毎日の勉強時間を2008年の8月から分単位で記録していました。すると、丸一日大学に居たはずなのに意外と勉強時間が少ないことや、勉強時間に波があることが客観的に裏付けられてきます。それにより、私の「いかに無駄な時間を削るか」という問題意識が明確なものとなり、直前期は1日12時間以上の勉強時間になりました。ぜひ一度勉強時間を計測してみることをお勧めいたします。

使用基本書

 私は、直前期の試験対策にいわゆる予備校本をあまり利用しませんでした(入学前は、「デバイス」(早稲田経営出版)を利用していました)。以下に、試験直前まで私が繰り返し読み、役立ったと言える基本書を列挙します。

 「憲法」(芦部・岩波書店)「行政法」(櫻井/橋本・弘文堂)「民法Sシリーズ」(共著・有斐閣)「基本講義債権各論T・U」(潮見・新世社)「レクチャー会社法」(吉本・中央経済社)「民事訴訟法講義案」(司法協会)「刑法総論講義案」(司法協会)「刑法各論」(西田・弘文堂)「刑事訴訟法」(寺崎・成分堂)となります。いずれも、珍しくはない定評のある基本書です。これに判例百選・重判と判例六法(有斐閣)を加えれば、短答・論文とも簡単には負けない闘いができるはずです(絶対に勝つとはとても言い切れません)。

 新司法試験の論文式試験は採点方式が基本傾斜となっています。これは、出題趣旨・ヒアリング・再現答案の分析から明らかです。それゆえ、定評のある基本書で基礎知識を固めることが重要です。直前期は手を広げるよりは、自分の守備範囲を固めることを重視してみると良いかと思います。

短答式試験対策

 短答式試験対策で重要なことは、まず過去問で9割以上の正答率を確保する実力をつけることです。私の主な短答対策の素材は、過去問と判例六法です。過去問を繰り返し解くことで本番の出題レベルを知り、その過程で重要な判例・条文をマスターするのです。「答え」を覚えては失敗をします。「判例と条文」を覚えるのです。この作業を丁寧に行なうことで、私は短答合格者平均を上回る成績を残すことができました(270点前後。これでも1000番前後なので、上位というわけではありませんが)。私のゼミのメンバー全員もほぼ過去問のみを演習素材として短答式試験を突破したので、有効であると思います。

 もちろん予備校の短答式答練が不要と言う訳ではありませんが(私もWセミナーの「全国統一模試」やTKCの模試を利用しました)、短答対策の方向性を誤らないためにも、常に過去問との対話を怠らないでください。

論文式試験対策

 論文試験対策で重要なことは、基礎体力(基礎学力)と技術(各科目ごとの答案の書き方など)です。私は大阪大学法科大学院における上位修了生ではありません。ですから、基礎体力が万全な状態で試験に臨んだわけではありません。技術なくして私の合格はなかったと考えています。それゆえ、ここでは技術に絞って説明をいたします。

 論文式試験では、各科目によって答案の書き方が異なります。刑法のような「構成要件→違法性→責任」という流れがあるかないかという話ではなく、刑法と刑事訴訟法でも問題文の事実の引用・評価の方法が少し異なるのです。例えば、刑法は刑事訴訟法と異なり、厳密に一つ一つの事実を評価してゆくことが求められます。「A事実引用、B事実引用、C事実引用、以上A〜Cの事実を総合考慮すると…」というような書き方をするのではなく、「A事実引用→評価、B事実引用→評価」という書き方をするのです。刑事訴訟法では、ここまで厳密に事実の評価は求められていません(もちろん、ただ事実を引用するのでは駄目です)。刑法とは逆に、民法では「最後に総合評価型」の優秀答案が珍しくありません。

 以上のような技術を、出題趣旨・ヒアリング・再現答案の分析を通じて体得するのです。

 そして、上記のような技術を、できればWセミナーの「論文式答案練習会」等を通じて繰り返し練習してください。解説講義を担当された羽広政男先生のお言葉ですが、「予備校で点数を採る書き方」ではなく、常に「本番で点数を採る書き方」を意識して答案を書くのです。予備校の採点方式は、基本傾斜になっていないことが多いからです。私は「論文式答案練習会」で50点に届かないことも多々ありましたが、それでも挫けず、ひたすら「本番で点数を採る書き方」で答案を書いていました。

 ご紹介した事実の引用・評価の方法の他にも、憲法おける「一資料一論点の原則」「想定は短く書けの原則」「憲法から解いてははならないの原則」など多数の技術があります。ぜひ出題趣旨・ヒアリング分析のほかにも答案練習会の解説講義や合格者講義を聞き、技術を身につけていってください。

くじけない心

 来年度は2009年度を超える激戦が予想されます。その激戦を突破してもなお、現在は就職先が保証されないという状況が続いています。

 しかし、なんとしても合格したい。それが皆さんが考えていることであろうかと思います。私も、なんとしても合格したいと、勝つことばかり考えていました。自分の人生をかけた勝負なのですから、負けるという思考に囚われている余裕がありませんでした。私の敗北で、大切な家族を泣かせてはならないと必死でした。私を信じる友を裏切ってはならないと必死でした。ですから、試験3日目の民事系終了後に敗北を意識しかけたときも、「(理論上ありえませんが)刑事系で200点をとれば合格する!」と積極的な心に切り替えて乗り越えました。

 この試験は、ほとんどの方が人生をかけて必死に挑んできます。おそらく、私と2009年度不合格の方との差は紙一重であったろうと思います。ですから、皆さんも最後まであきらめずに合格を信じて頑張ってください。

 皆さんの合格を心よりお祈り申し上げます。

 

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