合格体験記:常に自分の位置を把握し、計画・実行することで合格を実現
S.A さん
中央大学法科大学院既修者コース修了
(平成21年10月記)
はじめに
私は、工学部卒業後22年間の銀行勤務を経て、2007年に中央大学法科大学院既修者コースに入学し、51歳で2009年第4回新司法試験に合格することができました。つきましては、法科大学院入学までの学習、法科大学院での学習、新司法試験に向けた受験勉強についての経験が、新司法試験合格を目指している方にとって多少なりともお役に立てればと思い、合格体験談を記します。
法科大学院入学までの学習について
銀行では、国内本支店で企業取引・企画、海外支店での日系・非日系取引に従事しており、法律関連業務を経験したことも、法律の勉強をしたこともありませんでしたが、2004年3月に銀行を退職し、弱い立場の人や窮状にある中小企業の弁護活動を通して社会貢献をしたいと考え、弁護士になるために司法試験を目指すこととしました。退職時点での計画は、最短では2年間の勉強で2006年5月の旧司法試験に合格すること、仮に不合格な場合は新司法試験の合格実績の高い法科大学院に入学し、2009年の第4回新司法試験に合格するというものでした。まずは、法律の勉強をしたことがないので、予備校の基礎講座を受講する必要があると考え、いくつかの予備校の体験講義の中で、Wセミナー渋谷校の先生の双方向的な講義と講義後も含めた熱意ある対応を見て、「基礎講座」を受講することにしました。当初、法律は数学や物理と較べると非論理的な感じがしてしまい、どのように勉強すれば良いか随分戸惑いましたが、半年程して、法律の条文の規定の仕方、条文の文言の解釈としての論点、論点に対する判例と学説の対立、判例の役割等が徐々に理解できるようになると、法律はなかなかダイナミックで結構論理的なものだと感じられるようになり、勉強が楽しくなってきました。しかし、勉強開始後1年では知識の定着が不十分で、2005年5月の旧司法試験は短答試験で不合格でした。もっとも、法律以外ですが過去の経験から、短答は後2ヶ月程徹底的に集中すれば、安定的に合格点が取れそうな、つまりもう一山超えれば何とかなるという感じがありました。そこで、短答不合格後の2005年7〜8月の2ヶ月間、1日15時間(不得意な刑法7時間、範囲の広い民法5時間、憲法3時間)を目標に、過去問と関連条文を徹底的にやりました。そして、基礎的な知識を効率的に定着させるために、わからないところについては付箋等を利用して定期的にまとめてチェックし、原則、毎日を過去問と六法で過ごしました。その結果、秋からの模擬試験では常に安定的に上位に定着するようになり、一つの達成感を感じると共に、商法・民事訴訟法・刑事訴訟法の論文対策にかなり時間を使うことができました。しかし、2006年の旧司法試験では短答は合格したものの、手続法である民事訴訟法と刑事訴訟法の知識の定着が不十分であり、かつ具体的なイメージを掴むことができなかったために、論文試験で不合格でした。もっとも、短答試験後論文試験までの2ヶ月間は、1年前と同様、1日15時間程度集中的に勉強した結果、民事訴訟法と刑事訴訟法も更に2ヶ月程集中すれば、憲民刑と同レベルに達することができると感じました。そして、法科大学院については、最高峰である東京大学と、実績があり、法曹界に人材の豊富な中央大学の既修コースを受験しました。東京大学は不合格だったものの、中央大学は授業料半額免除の奨学金付きで合格することができました。特に法科大学院の試験対策は行いませんでした。というか、7月の論文試験終了後は、1ヶ月程、反動なのか気力が伴わず集中して勉強ができなかったというのが実情です。論文試験不合格、中央大学合格、東京大学不合格の結果を受け、当初計画について中央大学法科大学院を経て2009年の第4回司法試験合格に修正しました。そこで、法科大学院入学前に、民事訴訟法と刑事訴訟法の基礎的知識の定着を2ヶ月程、基本書と六法で徹底的に行うと共に、新たな試験科目となる行政法のイメージを掴むために入門書を3回程繰り返し読みました。その結果、法科大学院入学時点においては、行政法と不得意な憲法意外の5科目はほぼ同水準に達していました。というか、民事訴訟と刑事訴訟法は、条文と手続の全体像がわかるようになると急速に理解が進み、最も得意な科目になっていました。
法科大学院での学習
法科大学院で実際に講義を受け始めると、カリキュラムそのものは論文試験対策に非常に有益であると感じました。しかし、一方で短答対策は全て各個人に委ねられていること、法科大学院の講義だけでは論文の重要論点を網羅しておらず、論文を記述する機会も少ないこともわかりました。そこで、法科大学院の講義は論文対策の一部であると認識した上で、2年間の学習計画を立てました。また、旧司法試験での経験から、絶対的な答えがあり論文の基礎となる短答での安定的な高得点を早期に確保し、一定の安心感をもって論文対策に集中できるようにしようと考えました。まず、法科大学院の基本的法律科目(新司法試験の科目)に関しては授業を100%理解し、つき授業が復習で授業後は復習する必要がない程の事前準備を心がけました。具体的には、学説を理解するのではなく、該当する判例に加え当該論点や周辺の最高裁調査官解説を数多く読み、判例を理解するように努めました。次に短答は、2007年5月の第2回本試験を時間どおりに自宅で解いたところ約7割だったので、3年生の1年間を論文対策に集中できるように2008年5月の第3回本試験で8割を目標としました。最後に論文は、行政法と倒産法を3年生までに他の科目の8割程度までに固めておくこと、穴をなくすために論点の網羅的な学習を着実に行うこと、2年生からWセミナーの「論文式答案練習会」を利用し、論文を書く手順を確保することを目標としました。短答については、第3回本試験を自宅で解いたところ9割近い得点で、各科目ともまんべんなく点数が取れており、それ以降は安心して論文試験に集中することができました。また、試験直前に短答と論文の比率変更がありましたが、短答の比率が下がっても、短答知識の多くは論文知識と重なっているので、実質的な比率は変わっていないと思い、殆ど気になりませんでした。試験直前の変更は好ましいことではないと思いますが、元に戻ることはないですし、気にかけても仕方ないことだと思いました。論文は、2年生の秋から「論文式答案練習会」に参加しましたが、論点については理解不十分と穴があり、書くことについては長文の読み方と構成と記述の配分が試行錯誤であり、2年生の間は波が大きく安定しませんでした。しかし、3年生の秋からの「論文式答案練習会」では、長文への慣れと自分なりの配分を掴み、安定するようになりました。また、「論文式答案練習会」や「全国統一模試」は、参加者全体における自分の位置づけを把握できるだけでなく、優秀答案等を通して上には上があることを認識し、モチベーション向上にもつながりました。
「羽広式合格講座」及び「羽広ゼミ」について
3年生になり、条文と判例の試験だけでなく実務での重要性を再認識していたところ、判例六法を教科書として、過去問を徹底的に解析する「羽広式合格講座」と「羽広ゼミ」が自分の認識とマッチすると思い、受講しました。この受講により、試験に必要な知識の定着を確固たるものとすることができただけでなく、法律における日本語の使い方、過去問の重要性、出題の趣旨の重要性・意図、論文の問題・設問の読み方、科目別の具体的な論述等自習や友人とのゼミでは手の届かない部分について十分な理解をすることができ、ある程度自信を持って試験に臨めました。特に、「羽広式合格講座」では羽広政男先生の一言も漏らさず理解し、先生が次に言う条文や論点は何か等を考えながら受講していました。また、講義で先生の述べられた要点をできる限り漏らさずノートに書き(3時間の講義で毎回15枚くらいになりました)、帰りの地下鉄20分でざっと見ながら思い出し、翌朝、記憶の新鮮なうちにもう一度短時間で見返すということを地道に繰り返しました。
最後に
私が合格できた要因を自分なりに分析すると、自分の位置を踏まえた計画を立てたこと、条文と判例を学習の核としたこと、過去問の繰り返しと出題の趣旨の分析に努めたこと、常に六法を参照しながら勉強したこと、基礎的基本的知識の習得と理解に努めたこと、争点はどの条文のどの文言のどのような解釈なのかということと、事例に当てはめるとどうなるのかということを常に意識していたこと等です。今から思い返すと誰でもが考える当たり前のことをやっただけですが、合格するまでは法科大学院入学の準備を含めれば最低でも4〜5年の期間が必要ですので、常に自分の位置を把握した上で計画を立案し、実行することが重要だと思います。私のように非法学部出身、20年以上の実務経験のある40代後半の方は、殆どおられないかもしれませんが、参考になる部分があれば幸甚です。お読みいただいた方全員の合格を祈願しております。

