合格体験記:平成21年度新司法試験の一合格体験記

本井 孝史 さん
北海学園大学法科大学院 既修者コース修了
(平成21年10月記)
法科大学院の講義・演習と受験勉強
法科大学院での課題が多くて受験勉強の時間が取れない、という話をよく耳にします。確かに、自分の受講している法科大学院の講義・演習が受験勉強にもなっているのかの判断は難しいと思います。少なくとも私はできていなかったように思います。例えば、難しくてよく分らない内容だとこんなものは出ない、と思ってしまうこともありました。しかし、平成21年度の出題趣旨にあるように「考える」ということが要求されており、よくわからないことを「考える」よい機会であったのだと今では思います。先輩の話などに耳を傾け、有用と判断される講義・演習については自身の「受験勉強」に上手く組み込んでいくべきだと思います。
私は新司法試験にも有用であったはずの講義・演習と受験勉強を完全に切り離してしまいました。そのため、法科大学院修了後に私の「受験勉強」が始まりました。
具体的には、講義・演習のテキストやレジュメと「受験勉強」のそれを全く別物にしてしまいました。これは非常に非効率的で、法科大学院終了後本試験までに行政法、民法、刑事訴訟法を勉強する時間はほぼありませんでした。
勉強の素材の多様性と一元化
勉強の素材を一冊のみで済ませることは難しく、複数の素材を使わざるを得ないと思います。受験に必要なことが何もかも載っている本はおそらくないと思われるからです(仮に、そのような本を求めると、通読困難な厚い本を選択することになるでしょう。しかも、それで全て載っているとは限らず、新しい本が出るたびにふらふらすることになりかねません)。
中心となる一冊(以下、基本書と呼びます)を選び基本を押さえ、必要なものは補充していく、ということになると思います。補充していくものに講義・演習のレジュメ等を含めることで、前述した「受験勉強」への組込みが実現可能だと思います(私はできませんでしたが。)
こうしていくと一定程度の一元化が図られると思います。では、これを超えて自作ノート作成などまでするべきでしょうか。この場合自作ノートとは1科目につき3時間程度で見返せるものを指します。
結論としてはあるにこしたことはないので、作れるものなら作ればよいかと思います。もっとも、可処分時間と相談して作る必要があります。現実的なところとしては基本書を補充したものをマスターしたと思う部分を廃棄する、要約を作成する等により、減らしていく(3時間程度で見返せる量まで)、ということになると思います。また、基本書は減らすのが難しいので、定評があり、新しく薄いものを選ぶのが良いと思います。
ここでも私は失敗しています。可処分時間を超える自作ノートを作ろうとしてしまいました。結果、直前期等に見返すべき資料を作ったはずなのに、3時間程度では見返せない資料ができ上がりました。挙句、見返す時間もありませんでした。作る過程が勉強になったと思いたいところですが、だとしても非常に効率の悪いやり方だったと思います。
基本書の選択
以下は私が読んだもので定評があり、新しく薄いものに該当し得ると思うものです(若干古いものもありますが)。
| 憲法 | : | 立憲主義と日本国憲法 |
| 行政法 | : | 私は宇賀先生の行政法T・Uを使用したので「薄いもの」はよくわかりません |
| 民法 | : | 入門民法(全) |
| 会社法 | : | バーチャル会社法 |
| 商法総則・商行為 | : | 弥永先生のリーガルマインド商法総則・商行為 |
| 手形法 | : | 新海先生が編者の手形・小切手法 |
| 難しさをものともしない勇者には坂口先生の手形小切手法の理解 | ||
| 刑法 | : | 山口先生の刑法 |
| 民事訴訟法 | : | (手に入るなら)林田先生の司法試験解法マニュアル民事訴訟法 |
| 民事訴訟法講義案(司法協会) | ||
| 刑事訴訟法 | : | 小林充先生の刑事訴訟法(ただし、先生御自身は講義を受けて補充することが前提の本であるとおっしゃってました) |
| 倒産法 | : | 新・論点講義シリーズ破産法 |
| 松下先生の民事再生法入門 |
私の「受験勉強」について
私が「受験勉強」として行なったことを参考までに述べておきたいと思います。
憲法は立憲主義と日本国憲法を通読しました。これは処分の合憲性判断手法と原告の主張を厚く書くために各人権の重要性を理解するためでした。私の理解力不足に負うところが大きいのでしょうが、目的が達成できたかは謎です。事例研究憲法は2年次に第2部まで答案作成を行ないました。コラムと脚注が一番勉強になったように思います。
行政法は1年次の夏休みに宇賀先生の行政法T・Uを読みました。これで短答答練ではある程度点が取れるようになったと思います。しかし、これも私の理解力不足のためだと思いますが、論文を書ける気がしませんでした。そこで、2年次に事例研究行政法の第2部まで答案作成を行ないました。これも非常に勉強になったと思います。法科大学院終了後は受験新報09年4月号の行政法答案構成ノートしか見る時間がありませんでした。これは非常に参考になりました。
民法については法科大学院のカリキュラムに従って勉強した以外は特に何もしていません。というより何もできませんでした。行政法や選択科目を習得するのを優先した結果です。苦手科目を優先する、という方針からは間違っていなかったのだとは思います。
会社法は葉玉先生の会社法100問を1200肢を含めて全て検討しました。それでも知らない問題が今年は出ましたが、仕方がないと割り切るのも手だと思います。
民事訴訟法は藤田先生の講義民事訴訟と解析民事訴訟を通読しました。後者の中で前者を参照するように指定されている場合には必ず前者に戻りながら読みました。今年の論文で白紙回答をせずにすんだのはこの本のおかげだと思います。
刑法は構成要件を確認していくことと、平成の重要判例をチェックしていきました。前者はともかく、後者は必ずしも今年の本試験の傾向に沿わない勉強方法だったかもしれません。論点よりも、事実評価の部分をもっと鍛えるべきだったように思います。
刑事訴訟法は法科大学院終了後は手付かずで本試験を迎えてしまいました。計画性が足りませんでした。在学中は百選と重判に掲載されている判例の調査官解説を全部読みました。非常に勉強になりましたが、効率の面ではあまり人にお勧めできません。読む数を絞るべきだったと思います。調査官解説については他科目についても同様のことを行いましたが、他科目についても数を絞るべきだと思います。
倒産法は、法科大学院終了後にやっと百選に取り掛かりました。百選は有用であったと思います。もっと早い時期に読むべきでした。
答練について
自分なりに目的を持って利用すればよいと思います。私はWセミナーの「短答式答案練習会」および「論文式答案練習会」「全国統一模試」を利用しました。例えば、時間内に解き終える訓練という目的があると思います。これに不安がなければ自分の全国順位の確認や弱点探しがあり得ると思います。短答であれ論文であれ、問題の質が本試験と異なるのは当然ですが、短答答練では自分の全国順位の確認が可能だと思います。短答式答練の結果と本試験の短答の結果は概ね相関しているからです。弱点探しについては特に述べるまでもないでしょう。
論文式答練については短答よりも本試験との相関関係は弱いように感じます。問題の質や採点基準の違いがあるであろう以上、止むを得ないと思います。ですから、自分の順位確認よりは一定時間内に書き終えること、答案構成の作り方等様々試行錯誤してみること、実際に書いてみて理解不足を理解すること等の使い方を意識的に行なうべきだと思います。
答練のために土日が半日以上潰れるのが非常に苦痛だったこと、タイムスケジュール等になれるのは直前期の答練で十分であることにより、私は先に問題等を受け取り、都合のつく時間に時間を計って解いていました。上記の目的達成に支障はなかったと思います。
勉強するということについて
「見やすい」資料を作る等の作業は勉強ではありません。作業をしても学力はつきません。また、理解と記憶は勉強の両輪だと思います。考え、理解する、その上で、あるいはその過程で記憶もしていく。そうしないと覚えることが無限に増えていくおそれがあります。また、理解していないと応用がきかないように思います。
終わりに
合格に一番必要なことは勉強を続けることだと思います。続ければ受かるとは限らないのが恐ろしいところですが、続けなければ受からないと思います。
この拙い合格体験記を読んでくださった方が、作業ではない勉強を続けて司法試験に合格することを祈念しています。

