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合格体験記:私が司法試験合格のためにやったこと

K・T さん

東京大学法科大学院 既修者コース修了

(平成21年10月記)

 

はじめに

 私は、2007年3月に東京大学法学部を卒業後、同年4月に東京大学法科大学院既修者コースに入学し、2009年の新司法試験に合格することができました。以下、私が新司法試験合格のためにやったことを紹介します。

法科大学院入学前

 学部時代の勉強は、大学の授業とその予習・復習以外は、基本書を読むことと旧司法試験の択一の過去問を解くことに終始していました。この時の経験は法科大学院入試の役に立ったのはもちろん、新司法試験対策にもなりました。新司法試験の直前に基本書を通読する必要はそれほどないと思いますが、優秀な学者の先生方の書いた文章をじっくりと読み解いたことが一度はあるという経験は、論文式試験において出題の意図を把握するのに役に立ったと思います。旧司法試験の択一の過去問を解いておいた経験も、新司法試験の短答式試験に直接活きてきました。

 また、この時期に進路についてたっぷり悩んでおいたおかげで、新司法試験の勉強が辛い時も法律家を目指すという自分の選択を後悔せずに済んだように思えます。

法科大学院1年目

 新司法試験に向けた問題演習などは特に行いませんでしたが、法科大学院の授業についていけるような努力はしました。

 法科大学院の授業のうち、要件事実についての民事実務系の授業は、新司法試験の論文式試験の民事系科目において答案を作成するための基礎になっていたように感じます。また、刑事実務系の授業は短答式試験の知識のインプットになりました。それ以外の科目も、法律上の概念の本質的な理解に役に立ちました。概念の本質的な理解を欠いていては論文式試験において全く見当違いな答案を作成することになり得るため、そのような意味では法科大学院の授業を真面目に取り組むことは新司法試験対策にもなると思います。

法科大学院2年目の春から年末まで

 法科大学院の授業に並行して、百選を丁寧に読み、法律の条文を素読し、「新多肢択一問題集」(早稲田経営出版)と新司法試験の論文式問題の過去問を解きました。

 学部時代には、百選を読む際ついつい判旨のところを重点的に読む癖があったのですが、事実もきちんと読むように直しました。時系列が複雑であったり登場人物が複数であったりする場合は、図や表などを書き込むようにしました。これによって新司法試験の問題文の長い事案を読むのが苦痛でなくなったのと同時に、あてはめに使える事実を問題文の中から見つけることができるようになったように感じます。

 法律の条文の素読は、最初は短答式対策として始めたつもりだったのですが、結果として論文式対策にもなりました。大事な条文の存在を忘れていたり、条文間の関係を履き違えていたりすることによって、全く見当違いな答案を作成してしまうことが減ったからです。条文の素読は単調な作業ではありますが、いろいろな工夫によって楽しむことができました。たとえば、条文を紙に印刷しクリアファイルに入れてお風呂の中でゆっくり読むと、机に向かうのとはまた違った気分で取り組むことができました。

 「新多肢択一問題集」(早稲田経営出版)は、法科大学院2年目の初め頃から細々と解き始めましたが、本格的に解き出したのは法科大学院2年目の冬学期の試験が終わってからでした。最終的には、旧司法試験の勉強での貯金があった憲法と民法は1回、その他の5科目は2回、頭から通して解きました。「新多肢択一問題集」は科目により多少前後しますが約400題程度の問題が掲載されており、それぞれ3〜5つの肢があるので、ボリュームとしては充分でした。また、特定の分野に偏ることなく問題が掲載されているので、網羅的に知識をインプットすることができました。そして、インプットに有効だったのみならず、出題形式が本試験と同じなので、短答式試験を解くコツや勘のようなものを身に付ける役にも立ちました。×が続くと落ち込みますが、それを我慢して1冊終わらせると、多肢択一問題集に手をつける前よりも数十点単位で点が上がった科目もあり、驚きました。

 論文式試験の過去問を初めて解いたのは法科大学院2年目の夏休みでした。この時期に最終目標である本試験の感触を肌で感じておいたおかげで、自分の課題が浮き彫りになると同時に、無駄な不安を抱かずに済んだと思います。論文式試験の過去問については、骨の折れる作業でしたが、答案構成にとどめず、本番と同じ時間をかけて答案を実際に書いてみることを心がけました。実際に答案を書くことによって、ペース配分の訓練になったことはもちろん、曖昧になっている規範や論証を発見することができました。答案構成の時点では「ここはあの説で書こう」等と考えて済ませてしまっていても、いざ答案に書こうとするとその説の根拠が思い出せなかったり、最高裁判例の有名な規範が正確に書けなかったりすることに気づき、後日百選や基本書に立ち返ることで論文式試験用の知識のインプットになったと思います。そして、解き終わったら出題の趣旨や優秀者の再現答案をよく読み、疑問点は受験生仲間同士できちんと検討するようにしました。また、自分の答案を受験生仲間に読んでもらい、おかしいと思うところを指摘してもらいました。これにより自分の理解の浅い点について多く気づかされました。加えて、自分の答案を読んでもらうだけでなく、受験生仲間の答案を読ませてもらいました。これによって、「友達がこんなにいい答案を書くのだから自分も負けていられない」という意識を持ち続けることができたと思います。

 以上の新司法試験対策に加え、法科大学院の授業にも力を割きました。特に新司法試験の選択科目については、ついつい対策が後回しになってしまうことが予想された上、当時市販されている教材が基本書と百選ぐらいしかなかったということもあり、法科大学院の授業である程度完成させるつもりでいました。

法科大学院2年目の年明けから新司法試験まで

 法科大学院の2年目の年明けから、Wセミナーの「論文式答案練習会」を受講しました。答案を書くという作業はそれ以前から過去問で行っていたとはいえ、シビアに点数が付くのはこれが初めての経験であり、最初の数回は答案が返ってくるたびにショックを受けた記憶があります。ただ、その繰り返しの中で自分の答案の弱点に気付くことができました。私の場合、学部試験・法科大学院試験では学者の先生が採点するため、独創性のある答案を書くと比較的評価されやすかったことから、「自分以外の人が書かないようなことが書いてあるのがいい答案。自分以外の人がみんな書いていることに紙面を割いても仕方がない。」と誤解していた節があり、自分以外の人がしっかりと書いていることをおろそかにしていた、ということに気づきました。この大きな弱点に気づかずに本試験に突入していたら、基礎がスカスカな、ろくに点が付かない論文を書いてしまったように思われます。

 また、冬学期の試験が終わった後は以前に比べ時間ができたので、「新多肢択一問題集」(早稲田経営出版)のペースを上げました。答案練習会や勉強会のない日は1日150問(本試験も150問であることから)というペースを崩さないようにしました。

 そして、3月末にはWセミナーの「全国統一模試」を受験しました。本番と同じタイムスケジュールを体験することができた上に、2週間程度で成績表が返却されたので直前期にやるべきこと(私の場合民法の短答用知識のインプットと論文における規範の適当さの解消でした)が明確化され、無駄に焦らずに済みました。

最後に

 法科大学院に入学した頃、私は、新司法試験が始まった数年前から何となく蔓延している「暗記に頼ってはいけない」「紋切り型の答案を書いてはいけない」という空気の中で、「じゃあ何をしたらいいんだ…」と身動きが取れなくなっていました。新司法試験を終えた今思えば、単純なことではありますが、適切なインプットとアウトプットをバランスよくコツコツやるしかないのではないかと感じます。「暗記」や「紋切り型」が通用しないということは、天性のセンスがあるかどうかが全てということではなく、楽をして合格できる近道がないということに過ぎないのではないでしょうか。

 

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