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合格体験記:合格へ遠回りしないために

梶 智史さん

梶 智史さん

東京大学法科大学院 既修者コース修了

 

合格にいたるまで

 「いやー長かった…。」というのが合格発表を見た際の、素直な感想です。

 その日は、朝から緊張していて、一緒に学習していた友達と1日を過ごし、一緒に馬鹿な話をしながら法務省に向かいました。緊張しすぎたせいか、発表予定時刻を30分近く過ぎてから掲示板にたどり着きました。掲示板を見上げて自分の番号を探しているとき、本当に緊張しました。自分の番号が本当にあるか確認するために、その場にいた何人かの友達にも見てもらいました。

 やっぱりありました、ありました。どうやら現実のようです。

 「いやーよかった、本当に長かった…。」

 気になって何度も電話をかけてきていた母親に電話したら、電話の向こうで鼻をすする音が聞こえました。照れくさくなって、すぐ電話を切ったことを覚えています。

 私が司法試験を受け始めたのは、平成13年。大学4年生でした。

 法学部に入学し、その秋からWセミナーの「基礎講座」(※現、「法律科目基礎講座」)を受講していたのですが、そのときはあまり真面目に取り組んでいなかった気がします。どうせカセットテープにとっているから、と二度と聞かないテープをコツコツ集めていたのです。今思えば、「基礎講座」には合格へのヒントがいっぱい隠されていたのですが。

 平成13年、14年と択一落ち、大学院入試(当時は大学院に行きながら司法試験の受験をするスタイルもポピュラーだったのです)にも失敗した私は、やっと奮起し、翌年の平成15年に初の択一合格を果たすのです。

 しかし、そこからが長かった…。

 択一に合格するも、論文試験では良い評価を得られませんでした。しかし、そのときは「自分はできる」と考えていたため、あまり深刻に考えていませんでした、このとき法科大学院制度が始まり、私も「保険」のつもりで法科大学院入試を受験しました。

 不合格…。

 原因は法科大学院入試を甘く考えていたこと、そして、単純な実力不足でした。 めげずに翌年も旧司法試験を受験しました。その翌年も…。択一の合格通知だけがたまっていきました。

 基本書中心の学習だとテクニック的な面で予備校中心の学習をしている受験生に勝てないのではないか、と考え答練を受けまくった年もあります。また、学習のしすぎで頭が硬くなっているのではないかと考え、むしろ学習をしないで受験した年もあります(当然ながら論文の評価は最悪でした)。

 一体自分のどこがいけないのか、何をすればいいのかわからない日が続きました。誰も答えを教えてくれませんでした。

 最後の希望として、法科大学院を再度受験しました。法科大学院に合格しなかったら、司法試験を受けるのはもうやめようと思っていました。

 合格。

 久しぶりに見る合格の文字。小躍りするほどうれしかったことを覚えています。しかも、高校時代は入学することは不可能だと思っていた、あこがれの大学でした。

 法科大学院に入学して、私はなぜ旧試験に合格できなかったのか、どこが足りなかったのか、講義を受ける中でなんとなく分かるようになってきました。

 旧試験を受けていたから、基本的な知識はある。また、論文答練に慣れていたため、文章を書くことにも慣れている。しかし、評価は高くない(なぜか憲法だけ評価が高かったのですが)。

 当たり前のように聞こえるかもしれませんが、題意を捉えていないことが根本的な原因だったのです。つまり、法律の学習をする際に、判例は「…」といっている、有力な説は「…」といっている、そのような知識は十分に持っているつもりでした。しかし、どうして有力説といわれるものが出てきているのか、判例が多くの頁を割いて説明しているのはなぜか、そのような点に着目して学習したことが無かったのです。単なる「記憶する学習」になっていたのです。

 だから、答案を書くと、どこかずれたようなものになる。一見するとうまくまとまって書かれている様な気がする。しかし、その実は独りよがりのひけらかし答案だったのです。

 このような自分の弱点を補強するために役立ったのは、基本書を読み込む(ただ漫然と読むのではなく、以下のように問題点を意識して読むこと)こと、そして、Wセミナーが発行している「デバイス(※現、「デバイス・ネオ」)」(早稲田経営出版)など、論点ごとにどのような見解があるかをコンパクトにまとめた教材でした。以前もこのような教材を使っていたのですが、使い方を誤っており、通説・判例のみを「記憶」していました。弱点に気付いてからは、どのような問題点があり、これに対してどのように対処すべきなのか、どのような見解があるのか、自分の頭で考えるようになり、その補助として教材を使うようになりました。学者の書いた教科書はその学者の視点から書かれています。そこで、客観的な立場から問題点を把握するには上記の様な教材が必要だったのです。

 以下では、私の経験から効果的な学習方法、教材の使い方などについて述べたいと思います。

学習方法について

  1. 短答式試験対策
    私は元々旧試験を受験しており、短答式試験は「落ちるわけがない」と高をくくっていたところがあったのですが、さすがに受験生のレベルを知るべきであろうと、Wセミナーの「短答式答案練習会」を受講しました。
    Wセミナーの問題は細かい知識を問うものも多く、難易度は高めです。しかし、本番の試験では緊張などから確実に時間が足りなくなること、細かな知識を確実に身につけることが応用的な問題に対処する上でも有用であることから、難易度の高い問題に触れられたことは良い経験になったと思います。
    また、これと並行して毎日の学習として、「多肢択一式問題集」(早稲田経営出版)を使いました。短答式試験は瞬発力を要する試験でもあるので、毎日の「素振り」も重要です。「多肢択一式問題集」は問題数が多く、毎日コツコツと学習することに向いています。
    ただ、重要なのは基本的な知識(試験員がそう考えているであろう“基本的”知識)を習得することは必須ですが、短答式試験においても大きな制度の流れや、制度趣旨を押さえておくことも必須です。ため込める知識には限界があります。しかし、基本原則を押さえておけば本番で知らずのうちに得点がとれるものだと思います。
  2. 論文式試験対策
    論文式試験対策において重要なのは、とにかく書くことであると思います。テキストを読んで、また、実際に問題に触れてみて、「わかった」と思うことは多々あるでしょう。しかし、その「わかった」ことを添削者に伝えられるかというと、これは意外に難しいことのように思います。本番では緊張もしているでしょうし、長丁場の試験の疲れから手が動かなくなってくるかもしれません(実際に私は、本試験の最後の科目である刑事訴訟法の時間に手がうまく動かなくなってしまいました)、このようなときに助けとなるのは、普段から論文を書いてきたという経験だと思います。そこで、私はとにかく良問に触れて、数を書くこと、そして、これを書き直して苦手を克服する、という学習方法をおすすめします。書き直すという行為はかなり「面倒くさい」ものです。しかし、書き直すことによって、自分の苦手な部分がはっきりわかってきます。手で書き直すのはおっくうだと思うのであればパソコンを使ってもいいので、書き直しをしてみてください。具体的には「論文式答案練習会」をうけるのが良いと思います。添削もしてもらえるので、上記の伝えるという点にも配慮して学習することができるでしょう。
    もちろん、書く前には書く「内容」について理解しておかなければなりません。基本的な知識、テクニックなどは、「デバイス」などの教材に盛り込まれています。
    次に触れたいのは、旧試験の問題は今でも役に立つということです。旧試験の問題は新試験とは傾向が違うから、という方もいると思います。しかし、私は試験委員の先生が聞きたいことは、旧試験であっても、新試験であっても結局は同じである、と考えています。そこで、旧試験を毎日の学習に取り入れることも有用であると思います。
    そして、短答式試験と同様に、「木を見て森を見ない」ことにならないように、大局的に学習することが重要だと思っています。○○の論点がわからない、から今日はこれを重点的にやろう、という学習方法も有りだとは思います。しかし、あまりにマイナーな部分について時間をかけすぎては労多くして功少なしと言わざるを得ません。イメージとしては、器に漆を塗るかのごとく、全体を何回も何回も復習することが重要だと思います。

最後に

 先ほど述べたように、私は以前から旧試験を受けていました。そのときの経験と照らして考えると、新司法試験は「合格不可能な」試験ではありません。また、1つのミスが命取りになる試験でもありません。しかし、誤った方向に進んでしまったり、絶対的に学習量が足りていなかった場合には、不幸な結果にたどりつかざるを得ないと思います。

 上記で述べた学習方法や、周りの合格者の方のお話を参考にしていただき、是非学習計画にこだわって、合格するための学習をしていただきたいと思います。

 

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